「仕事への熱意」は質問紙で測れるのか。UWESの使いどころ
「あのチームは熱意がある」という印象を、数字で確かめることはできるのか。ワークエンゲージメントの定義と9項目の質問紙UWES-9の確からしさ、数値を読むときの限界を整理します。
Stella Nest 編集部

「このチームは熱意がある」「あの部署は元気がなさそうだ」。現場の責任者や人事の担当者は、そうした印象を日々持っていても、それを他の部署や過去の自分たちと比べられる形にするのは難しいものです。この記事では、「仕事への熱意」を短い質問紙でどこまで測れるのかを、論文をもとに整理します。
熱意は何として定義されているのか
まず、測ろうとしている「熱意」が何なのかを確認します。数字の読み方は、定義によって変わるためです。
研究の世界では、仕事への熱意はワークエンゲージメントと呼ばれます。Schaufeliらは、これを「活力(vigor)、熱意(dedication)、没頭(absorption)を特徴とする、仕事に関連した満たされたポジティブな状態」と定義しています[1]。2014年の総説でも、エンゲージメントは「活力・熱意・没頭という、ポジティブな動機づけの状態」と定義されています[2]。

現場の感覚に引き寄せると、次のようになります。
- 活力:仕事中にエネルギーがあり、粘り強く取り組めている
- 熱意:仕事に意義や誇りを感じている
- 没頭:時間を忘れるほど、仕事に集中している
つまり、ここでいう熱意は「やる気満々の性格」ではなく、**仕事に関連した「状態」**です。状態であれば、環境や仕事の進め方によって変わりうるものとして扱えます。この考え方は、仕事の要求と資源から動機づけを説明する枠組みとして、JD-Rモデルの記事でも紹介しています。
9項目の質問紙は、どこまで確かめられたのか
次に、この状態を実際に測る道具として最も広く使われているUWESについて、確かめられている範囲を見ます。
UWES-9の開発
UWES(Utrecht Work Engagement Scale)はもともと17項目の質問紙でした。Schaufeli、Bakker、Salanovaは、10か国で集めたデータ(N = 14,521)をもとに、これを9項目に短縮できることを示しました[1]。9項目版がUWES-9で、上の3要素の得点を出せます。
instrument: UWES(17項目 → 9項目に短縮)
data: 10か国
N: 14,521
checks:
- 確証的因子分析による因子構造の確認
- 内的整合性
- 再検査信頼性結果:構造は確認され、バーンアウトの対極と整理された
要旨によると、UWES-9の因子構造は確証的因子分析で示され、3つの得点には良好な内的整合性と再検査信頼性がありました[1]。つまり、同じ質問に答えたときに、項目間・時間をおいた回答がそれなりに安定している、ということです。
また、バーンアウトの要素(消耗と冷めた態度)と、エンゲージメントの要素(活力・熱意・没頭・職務効力感)に分ける2因子モデルが最もよく当てはまったと報告されています。著者らはこの結果から、ワークエンゲージメントはバーンアウトの「ポジティブな対極」とみなしうると結論づけています[1]。
| 確かめられたこと | 内容(Schaufeli ら 2006) |
|---|---|
| 項目数 | 17項目から 9項目 に短縮 |
| データ | 10か国、N = 14,521 |
| 信頼性 | 3つの得点で内的整合性・再検査信頼性が良好 |
| 位置づけ | バーンアウトのポジティブな対極と整理 |
ここで示されたのは「質問紙として一定の品質がある」ことで、「その点数が業績や離職を予測する」ことではありません。著者らも、UWES-9は積極的な組織行動の研究に使える「許容できる」測定特性を持つ、という控えめな結論にとどめています。
数値をどう読み、どう使うか
道具の品質が確認できたとして、点数を現場でどう読めばよいのか。この節では、総説と2025年の新しい研究から、読み方の注意点を整理します。
熱意は「動機づけ」に結びつく指標
Bakkerらの総説は、バーンアウトとワークエンゲージメントの先行要因と結果を、JD-Rモデルで整理しています。それによると、バーンアウトは健康面の結果とより強く関連し、ワークエンゲージメントは動機づけに関する結果とより強く関連する傾向があります[2]。熱意の点数は、健康状態そのものの指標ではなく、動機づけの状態を映すものとして読むのが妥当です。
2025年に発表された新しい研究
2025年に発表された新しい研究では、スペイン・カタルーニャ中部の医療従事者を対象に、ワークエンゲージメントと業務過多、仕事への満足、情緒的消耗の関連が調べられました。オンライン質問紙による多施設の横断研究で、回答したのは321人(看護職60.7%、医師39.3%)でした。結果として、業務過多・満足度・情緒的消耗がワークエンゲージメントと関連していました[3]。
| 研究 | 位置づけ | 対象・規模 | 分かったこと |
|---|---|---|---|
| Schaufeli ら(2006) | 定番 | 10か国、N = 14,521 | UWES-9の構造と信頼性が確認された |
| Bakker ら(2014) | 定番(総説) | 先行研究の整理 | 熱意は動機づけの結果とより強く関連 |
| Moreno-Martínez ら(2025) | 新しい研究 | 医療従事者321人(スペイン) | 業務過多・満足度・消耗が熱意と関連 |
2025年の研究は横断研究で、ある時点の関連を見たものです。「業務過多が熱意を下げた」のような因果は言えません。対象も一地域の看護職・医師に限られています。要旨に基づく紹介であり、他の業種にそのまま当てはまるとも限りません。
現場での使いどころと限界
ここまでの知見から、質問紙の点数を現場で使うときの考え方をまとめます。以下は、論文の結果を踏まえた私たちの整理です。
- 01個人の評価ではなく、チームや部署の状態を見る材料として使う(点数が評価に使われると分かれば、回答は変わりうる)
- 02一度きりの点数より、同じ人・同じ集団の変化を見る
- 03業務量や満足度など、関連する要因と並べて読む(2025年の研究が示す関連は、一緒に見ることの意味を示しています)
- 04自己報告であることを忘れない
なお、総説は今後の課題として、バーンアウトとワークエンゲージメントの日ごと・瞬間ごとの変動を挙げています[2]。年1回の質問紙では、その日の変動は捉えられません。短い自己報告を繰り返し集める方法は、経験サンプリング法の記事で紹介しています。
まとめ:熱意は「状態」として、複数の目で読む
ワークエンゲージメントは、活力・熱意・没頭からなる、仕事に関連したポジティブな状態として定義され、UWES-9という9項目で測れることが、大規模なデータで確かめられてきました。一方で、質問紙の点数は自己報告であり、点数だけで原因や将来を言い切ることはできません。
私たちは、主観アンケートに、生体や行動のデータを組み合わせて状態を読み取る方法を研究しています。まずは自社の質問紙が何を測っているのかを確認し、関連する指標と並べて、同じ集団の変化を追うことから始めてみてください。
注
- Schaufeli, W. B., Bakker, A. B., & Salanova, M.(2006)「The Measurement of Work Engagement With a Short Questionnaire」『Educational and Psychological Measurement』 https://doi.org/10.1177/0013164405282471
- Bakker, A. B. ほか(2014)「Burnout and Work Engagement: The JD–R Approach」『Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior』 https://doi.org/10.1146/annurev-orgpsych-031413-091235
- Moreno-Martínez, M., & Sánchez-Martínez, I.(2025)「The Associated Factors of Work Engagement, Work Overload, Work Satisfaction, and Emotional Exhaustion and Their Effect on Healthcare Workers: A Cross-Sectional Study」『Healthcare』 https://doi.org/10.3390/healthcare13020162(新しい研究)
